ラグビー日本代表の若手チームが露呈した課題と可能性:マオリ・オールブラックス戦の徹底分析
ラグビー日本代表の若手チームがマオリ・オールブラックスに敗れた試合を分析。課題と可能性を探る。

若手主体のJXV、マオリ・オールブラックスに完敗
2025年6月28日、東京・秩父宮で行われた「リポビタンDチャレンジカップ」で、ラグビー日本代表の若手主体で編成されたジャパンフィフティーン(JXV)がマオリ・オールブラックスに20-53で敗れた。先発15人の総キャップ51という若いチームだったが、昨季は10-36、26-14と競り合い初勝利も奪った相手に後半はワンサイドゲームの完敗。代表チームとは別働で準備を進めてきたとはいえ、戦術面、ラグビースタイルを共有しているだけに、今週末からのウェールズ代表とのテストマッチ(5日=北九州・ミクニワールドスタジアム、12日=神戸・ノエビアスタジアム)への課題も露呈した敗戦。
前半の奮闘と後半の崩壊
前半こそ17-15とスタンドを沸かせたが、後半は練習時間実質2日の相手に5トライ、通算9トライ(JXVは通算2トライ)を献上しての完敗。直接の指揮はニール・ハットリー・コーチングコーディネーターに託した日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は、試合後に若手による今季の“開幕戦”をこう評価している。
「JXVは、まだ本当に若いチームです。前半はすごくポジティブな40分を見せたが、後半はフィジカルの部分でついていけなかった。全てのラックを相手にスピードで上回られてしまい、空中戦も相手に奪われた。やはりフィジカル面のキャパシティーが最後まで持たなかったところは課題として取り組んでいくだけです」
ゲームスタッツから見える課題
ゲームスタッツからも苦闘が浮かび上がる。ポゼッション(ボール保持率)、テリトリー(地域獲得率)、そして攻撃の目安となるパス回数ではほぼ互角の数値を残しながら、攻撃をランプレーで進めた距離(ゲインメーター)はJXVの215mに対してMABは364mと1.5倍に上る。これは防御ラインを突破された回数(2対12)、タックル失敗数(32対17)からも判るように、JXVが簡単に防御を破られ、1度のアタックでロングゲインを許している。
敵陣22mラインを突破した回数とスコアに繋がった回数をみても、トータル5回の侵入で2トライだったJXVに対して勝者は10回中9回をトライに結び付けて、決定力の格差を数字でも明示している。日本のスピーディーなラグビーの目安として引き合いに出される「ラックスピード(ラックからボールを展開するスピード)」も、JXVは3秒以内に82%とMABの64%を遥かに上回る早い球出しをしているにも関わらず、アタックの遂行力や防御の脆さというそれ以前の問題で、この数値が意味のないものになっている。
今後の課題と展望
昨季の日本代表スタート時から、ボールが動き出すよりも早くサポート選手が動き出すなど指揮官が掲げる「速さと早さ」の優位性を充分には発揮出来ていないのが、2シーズン目最初の若手編成によるチームの現在地だ。今後の課題として、フィジカル面の強化と戦術の徹底が求められる。